活動のご報告
当「さくらプロジェクトと連携して独自の被災地支援を続ける「さくらっ娘隊」(代表・森遊子)が、7月5日、6日の両日、陸前高田で陶芸教室を開催しました。「さくらっ娘隊」のメンバーは、常滑市を中心にそれぞれ独立した陶房をもって活動する女性陶芸家で、昨年の仮設住宅団地モビリアでの陶芸教室には7人が参加しました。今回も1人が入れ替わって7人が「さくらっ娘7つ星隊」として、昨年に引き続きお揃いのTシャツを作って参加しました。
5月には常滑市の「とこなめ焼卸団地セラモール」の祭りで、お地蔵さんを作る陶芸教室を行い、併せて被災地支援の募金を呼びかける活動をしています。それら募金は、今回陶芸教室を行ったモビリア仮設団地自治会に寄贈しました。尚、この地蔵さん作りの教室は好評で、8月24、25日に行われる「常滑焼まつり」会場でも開催されます。
5日は、モビリア仮設集会所で、約30人の参加を得て行いました。
昨年は全員、お地蔵さんを作りましたが、2回目の今回は、昨年参加されている方も多いので、絵付け・アクセサリー作り・お地蔵さん作りの3班に分かれて行いました。
絵付けは、さくらっ娘隊のメンバーが用意したもの、さくらっ娘隊の活動を支援してくれる陶芸家が提供してくれた素焼きの皿などに、それぞれ思い思いの絵や言葉などを書きました。あらかじめ、奇跡の一本松スケッチ、好きな花の絵などを準備して参加した方もいました。
アクセサリー班は、8色の色粘土を使って思い思いの作品を作りました。講師を務めた作家がつけていたブローチやネックレスを参考にしたり、土鈴のような複雑なものを、指導を受けながら作りました。
初めての方は、昨年の教室で作られたお地蔵さんが、11月の仮設住宅自治会の文化祭に展示されたのを見て自分も作りたいと考えた方もいて、お地蔵さん作りをしました。
陶芸教室終了後、地元の方が用意してくれた「おふかし」「煮しめ」、さくらっ娘隊が準備した常滑の「蛸飯」や干物、果物などで、食事をしながら交流を深めることができました。
食事の後、7人の作家が用意して展示していた作品を1点ずつ差し上げる「じゃんけん大会」をしました。順番に選べるとあって、みなさん、熱の入ったじゃんけんを大笑いしながらしていました。気に入った作品を大事そうに手にして喜ぶ姿を見て、さくらっ娘隊のメンバーは、今年も来て本当に良かったと実感していました。
引き続き翌6日は、米崎町の「ヤルキタウン」のプレハブの会場で陶芸教室を行いました。33人の方が参加してくれました。
用意したお地蔵さんや人形などの見本の中から気に入ったものを作ってもらうことにしたのですが、ほとんどの方がお地蔵さんを作りました。思い返せば、さくらっ娘隊を結成して陶芸教室を行うことになったのは、リーダーの森さんが震災後、鎮魂の願いを込めてお地蔵さんを作り、家族や友人など大事な人を亡くした方に差し上げたいということから始まったのでした。お地蔵さんは被災地の方々にはぴったりの題材でもあったのです。
参加者の中に20代と思われる青年と母親の2人連れがいました。お母さんは熱心に作っていましたが、青年は傍らで作るでもなく携帯を見ていたりしました。終了後、お母さんが、指導したメンバーにお礼にと言って菓子折りを持ってきてくれました。当然に辞退しましたが、お母さんが言うには、青年は震災後、無気力になり仮設住宅に引きこもっていたのが、陶芸教室に出てきて何をすることもなかったにもかかわらずまた来たいと言ったそうです。外に向かうきっかけになったことが嬉しく、その喜びと感謝の気持ちを伝えたいので是非に、ということでした。
大きなお地蔵さんを作りたいという老齢の女性がいました。予想を超える参加者で粘土の量が心配なこともありましたが、あまり大きいと家に飾るのに邪魔になりませんかというと、自宅の玄関先に置くのだと言います。どういうことか分からず聞くと、津波に流されたご主人が、まだ戻っていないということです。ご主人は体の大きな方で、サンマが大好きだったので、大きなお地蔵さんにご主人が好きだったサンマを持たせて玄関先に置けば、迷わず戻ってきてくれるだろうと考えたようです。ご主人が迷って帰れないと考えたのでしょう。メンバーが色粘土で作った大きなサンマを手にしたお地蔵さんが出来上がると、その女性は涙を浮かべていました。
震災から2年半がたって復興の槌音が聞かれるようになったとはいえ、なお癒えない心の傷を抱えた方の現実に触れたさくらっ娘隊のメンバーは、改めて粛然とすると同時に、陶芸教室が引きこもっていた青年が再起の一歩をふみだす小さなきっかけになったかもしれないことに、言い知れぬ喜びを感じたと言います。“サンマ地蔵” を作った女性は、ご主人が戻らないことで現実が受け入れられず、宙づりのままで次の一歩が踏み出せないでいるのかもしれません。事情を聞かされたさくらっ娘隊のメンバーは、何も言えず、背中に手を回すことしかできなかったそうです。これまで心に封じ込めていた思いを、お地蔵さんを作ることで口にしたのであれば、完成したときの涙が、わだかまって消えやらぬ心の闇を溶かす一滴であってほしいと願わずにはいられませんでした。
終了後、くじ引きで順番に用意した作品を差し上げ、お茶を飲んで交歓しました。